季節外れの
昨日の朝、犬の散歩をしているときのことだ。木に囲まれたアスファルトの小道を歩いていると、視野のすみに違和感を感じた。「なんだろう?」と思い、その源を注視してみると、それはカブト虫だった。
今は6月だ。しかも夜からの雨が降り続き、今朝は肌寒ささえ感じる。もしかすると数日前に暖かい日が続いたので、孵化(ふか)してしまったのだろう。
この時期に外の世界に飛び出してきても、樹液や果実、そして子孫を残すお相手にはそうそう恵まれない。それどころか寒さの影響なのか弱っているようで、足がうまく動かせないらしく、まともに歩くことさえ出来ないようだ。機械仕掛けのおもちゃのようなぎこちない動きで、すぐにひっくり返ってしまう。
そのカブト虫を摘み上げ、自分の腕に近づけてみる。これなら安心して掴めると察したのか、カブト虫は必死に手足を広げ腕へしがみついてきた。「ぎゅっ」と力強く。その時、何故だか分からないが、カブト虫の「もっと生きていたい」という"強い意思"のようなものを感じた。
僕はそのカブト虫を持ち帰り、毎朝パンに付けるりんごジャムを与えた。
孵化したカブト虫はひと夏しか生きられない。その短い間に良い人、いや、良いカブト虫に出会えることを願い、元気になったら森へ帰そう…。
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